インスペクション・瑕疵保証(保険)サービス

東京都不動産協同組合は、2017年6月1日アットホームと提携し、組合員に「インスペクション」及び「瑕疵保証(保険)」に関するサービスの提供を開始した。今回は、この提携サービスに関わりの深い改正宅建業法、及び同法で規定される建物状況調査(インスペクション)、サービスの内容についてアットホーム㈱事業開発部に解説いただいた。(情報委員会)

東京都不動産協同組合 ~2017年6月より提携開始

インスペクション・瑕疵保証(保険)サービス
アットホーム株式会社 事業開発部

宅建業法改正の背景─既存住宅流通市場の整備・促進
本格的な人口減少・少子高齢社会を迎える中、既存住宅流通市場の活性化は、国民資産である住宅ストックの有効活用、既存住宅流通市場の拡大による経済効果の発現、ライフステージに応じた住替えの円滑化による豊かな住生活の実現等の観点から重要な政策課題とされています。
一方で、国土交通省によれば既存住宅の流通量は年間17万戸前後と横ばいで推移しており、全住宅流通量(既存住宅流通+新築着工)に占める既存住宅の流通シェアは約14.7%(2013年時点)と、欧米諸国に比べて極めて低い水準にあることはご高承の通りです[図1]。

既存住宅の流通量が増加しない要因の一つとして、消費者が住宅の質を把握しづらい状況にあることが挙げられています。
住宅購入意向はあるが既存住宅を購入しないという方に理由を聞いた調査結果[図2]からもわかるように、新築好きという国民性はあるものの、「問題が多そう」「中古(既存)住宅への心理的な抵抗感」「欠陥が見つかると困る」といった構造や性能への不安が既存住宅を購入しない大きな要因となっているようです。
このような状況を踏まえ、消費者が安心して既存住宅の取引を行える市場環境の整備を図り、既存住宅の流通を促進することを目的として、2016年6月3日に改正宅建業法が公布されました。

改正宅建業法のポイント─3つの段階での新たな措置
今回の改正では、既存建物取引時の情報提供の充実を目的に、不動産取引のプロである宅建事業者が、専門家による建物状況調査(インスペクション)の活用を促すことで、売主・買主が安心して取引できる市場環境の整備が図られていることが大きなポイントです。
具体的には、既存住宅取引の①媒介契約締結時、②重要事項説明時、③売買契約締結時の3つの段階において、新たな措置内容が定められています[図3]。
なお、の①~③の詳細は以下の通りです。

媒介契約において建物状況調査(インスペクション)を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面を交付
媒介契約締結時には、宅建事業者は媒介契約書に「建物状況調査を実施する者のあっせんの有無」について記載する必要があるため、売主または購入希望者等に対して、建物状況調査の制度概要等について紹介することが求められます。その上で、売主または購入希望者等の希望に応じてあっせんを行うこととなります。
インスペクションに関する情報提供が必ず行われるようになることで、これまで知らなかった消費者にも広く認知されることになり、利用促進の効果が期待されています。また、今後、あっせんができない宅建事業者は媒介契約が取りにくくなることも考えられますので、施行前に準備が必要となります。

買主等に対して建物状況調査(インスペクション)の結果の概要等を重要事項として説明
重要事項説明時には、インスペクションの実施の有無とともに、実施している場合にはその結果を説明することが義務付けられます。
これにより、買主は建物の状況が把握でき、それを踏まえた購入判断ができるようになるため、より実状に合った取引が可能になります。また、この建物状況調査の結果を利用して、引渡し後に住宅に瑕疵が発見された場合に補修費用等を保証する『既存住宅売買瑕疵保険』の加入促進効果も期待されています。

売買等の契約の成立時に建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面を交付
売買契約締結時には、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分等について、売主と買主の双方が確認し、その内容を宅建事業者が書面で交付することが義務付けられます。
売主と買主が互いに建物の状況を確認し、納得したうえで取引を行うことで、建物の瑕疵をめぐる引渡し後のトラブルを未然に防止する効果が期待されています。

以上のように、今回の改正によって、インスペクションの利用や既存住宅売買瑕疵保険の加入が促進され、売主や買主が安心して取引できる市場環境が整備されることで、既存住宅流通市場の活性化に繋がると考えられます。

宅建業法で規定される建物状況調査(インスペクション)とは?

建物状況調査とは、既存住宅の基礎、外壁等の部位ごとに生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の有無を目視、計測等により調査するものです。
建物状況調査は国の登録を受けた既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)が実施します。講習を修了していない建築士や検査事業者が実施する調査は、宅地建物取引業法に基づく建物状況調査にはあたりません。

また、建物状況調査の結果については、時間の経過とともに建物の現況と調査結果との間に乖離が生じることが考えられますので、重要事項説明の対象となる建物状況調査は“調査を実施してから1年以内のもの ”となります。

建物状況調査の対象となるのは既存の住宅です。戸建住宅、共同住宅(マンションやアパート等)共に対象となります。また、賃貸用の住宅も対象となりますが、店舗や事務所は対象ではありません。

調査イメージ
建物状況調査の対象部位については、国土交通省の「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を踏まえ、また、その調査結果により既存住宅売買瑕疵保険に加入できるよう、同保険に係る現場検査の対象部位と同様とされる予定です。

なお、現在「ホームインスペクション」や「住宅診断」等、様々な名称のサービスが提供されていますが、宅建業法で規定される建物状況調査は上記の通り、国の登録を受けた既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)が、既存住宅状況調査方法基準に基づき行う調査であるため、一般的には別物と考えられます。

◆改正宅地建物取引業法に関するQ&A

改正宅建業法における建物状況調査(インスペクション)や重要事項説明等について、Q&A形式で以下の8項目(全88問)にまとめた解説書が国土交通省から公表されていますので(平成29年6月1日現在)、一部抜粋してご紹介します。

1.建物状況調査に関する基礎知識
2.建物状況調査の対象部位及び方法について
3.建物状況調査を実施する者のあっせんについて
4.建物状況調査の結果の概要に関する重要事項説明について
5.「書類の保存の状況」に関する重要事項説明について
6.37条書面への「当事者の双方が確認した事項」の記載について
7.売買等の申込みに関する媒介依頼者への報告について
8.建物状況調査と既存住宅売買瑕疵保険について

Q:建物状況調査を実施することでどのようなメリットがありますか。
A:建物状況調査を行うことで、調査時点における住宅の状況を把握した上で、売買等の取引を行うことができ、取引後のトラブルの発生を抑制することができます。また、既存住宅購入後に建物状況調査の結果を参考にリフォームやメンテナンス等を行うことができます。
さらに、住宅瑕疵担保責任保険法人の登録を受けた検査事業者の検査人が建物状況調査を実施し、建物状況調査の結果、劣化・不具合等が無いなど一定の条件を満たす場合には、既存住宅売買瑕疵保険に加入することができます。なお、既存住宅売買瑕疵保険に加入するための検査の有効期限は1年となっています。

Q:宅地建物取引業者は建物状況調査を実施する者を必ずあっせんする義務がありますか。
A:宅地建物取引業者は媒介契約書に「建物状況調査を実施する者のあっせんの有無」について記載する必要があるため、売主又は購入希望者などに対して、建物状況調査の制度概要等について紹介することが求められます。その上で、売主又は購入希望者等の希望に応じてあっせんを行うこととなります。


今回の宅建業法改正では、“インスペクションの利用促進”とともに、“既存住宅売買瑕疵保険の加入促進”の効果が期待されています。

インスペクションと既存住宅売買瑕疵保険

インスペクションに関する情報提供が必ず行われるようになることで、インスペクションの認知度が高まり、利用促進されることは想像できますが、検査結果については、瑕疵がないことが保証されるものではなく、また検査時点からの時間経過による変化がないことを保証するものでもありません。
確かに、インスペクションの実施によって買主に安心感を与えることは間違いありませんが、万一、引渡し後に瑕疵が発見された場合に保証されるわけではないため、これで充分とは言えません。
そこで、既存住宅購入者の不安を払拭するために重要となってくるのが、引渡し後に瑕疵が発見された場合に補修費用等が保証される『既存住宅売買瑕疵保険』です。
なお、国民の住生活の安定の確保及び向上の促進に関する基本的な計画として策定されている住生活基本計画においては、次のような成果指標も掲げられています。

・既存住宅流通の市場規模
4兆円(H25) ⇒ 8兆円(H37)
・既存住宅流通量に占める既存住宅売買瑕疵保険に加入した住宅の割合
5%(H26) ⇒ 20%(H37)


◆提携サービスのご紹介
[アットホーム㈱「既存住宅瑕疵保証・保険サービス」]

売買される既存住宅を対象とした「検査※」と「保証」がセットでお申込みいただけるサービスです。
※宅建業法改正後の建物状況調査にも対応可能となる予定です。

 

詳しくは、東京都不動産協同組合のホームページでご確認ください。